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ブログ 今日のいもたつ

2010年04月

妻は告白する 1961日 増村保造

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愛する男に対する女のすさまじさが心を打ちます。
何故ああも人を愛することができるのか?
(それを表現した若尾文子はさすがです)

やっぱり出生にキーがありそうです。
物語では、そのあたりはほとんど触れていませんが、
この物語での女は、男が、愛してくれる男がいなければ、“もう”生きることが、
できなくなってしまっていました。

「たとえ3年に一度でも良いから合って」
希望がそこにしかないのです。

人の生き様は、自分ではわからない、気づいていない、
過去からの積み重ねが描かれているように感じました。

それと愛に対しての違いもメッセージも。
あれだけ人を愛せることが女にはできます。
それなのに男は・・・、
本当に鈍感または、エゴイストとして女の夫が登場します。

法廷劇としても面白みがありましたし、
増村監督の中でも代表作といえる作品なのではないでしょうか。

【銀幕倶楽部の落ちこぼれ】

日時:2010年04月09日 07:47

失はれた地平線 1937米 フランク・キャプラ

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第二次大戦への警鐘も込められている映画です。
争いのない理想郷、シャングリ・ラが舞台です。

この映画の理想郷は、違和感がありました。
人間が不完全だから違和感を覚えるのか、
あまりにもバランスを欠いているからなのか。

今も昔も、人がつくりだした世界には、
争い犯罪もろもろ嫌なところがたくさんあるけど、
心に描く理想が現実になってもそれは、やっぱり不完全でしかない。
そんな世界感を感じました。

結局は、家庭の中で小さな小さな理想郷を自分でつくる。
これが人ができることだし、
これができれば幸せなのでしょう。

【銀幕倶楽部の落ちこぼれ】

日時:2010年04月08日 07:59

林家正蔵 独演会

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落語好きと言ってもほとんど耳だけ。
今は亡き名人のCDを聞いていて、
現役を生で観るのは立川流。
とかなり偏っています。

正統派?というかは解かりませんが、
立川流以外の現役の有名な方はほぼ初めてでした。

大きなホールに満席でしたから、
正蔵師匠の人気に驚きつつ、
実力ある芸にその人気ぶりも納得でした。

師匠が二席、二つ目と前座がそれぞれ一席
3人とも上手でした。
でも3人でも独演会と言うのですね。

【いもたつLife】

日時:2010年04月07日 07:22

忍びの者 1962日 山本薩夫

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忍者を格好良い演出ではなく、泥臭い、けれど
これが日常である。という視点でとらえられています。
だから、ひとりひとりが地味です。
でもその方が現実だっただろうし、そう感じます。

人は環境と教育で、人格が形成されます。
忍者として生まれると、日陰に生きるもの、表には決してでない、
普通の幸せとは隔世になります。それが疑問にも思わない。
そんな主人公(市川雷蔵)が人並みに気づく話でもあります。

市川雷蔵は好きな役者ですが、こういう影がある役はぴったりです。

石川五右衛門を忍者として設定したことも面白いですし、
信長支配の戦国を、忍者を含めて敵対する底辺の者たちから描いた
という点でも面白い映画でした。

【銀幕倶楽部の落ちこぼれ】

日時:2010年04月06日 07:30

ザッツ・エンタテインメント 1974米 ジャック・ヘイリー・ジュニア

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たかだか100年余りが映画の歴史ですが、
無数の作品がつくられました。
言うまでもないことですが。
多種多様で、
国が違えば違う感覚、同じ国でも全く作風が違うのも当たり前、
でも映画会社のテイストもあったりもします。
また、多くのジャンルも出来上がりました。
時代とともに変遷してきました。

映画を縦横無尽に鑑賞していると、
こういう映画にある時出会うと楽しくなります。

ミュージカルという映画史を語る上でなくてはならないジャンル
それもMGM社にしぼり、その醍醐味を往年のスターが紹介してくれます。

ミュージカルに巨大な力が乗り移っていった時、
その時にしかできない作品ができていったことがわかります。

何故この頃のミュージカルを現代によみがえらせないのか?
そんな疑問を何回か持ったことがあります。
あたりまえに、フレッド・アステアのような役者が現れないことも
一因だと思っていましたが、それだけでは腑に落ちませんでした。

その謎のひとつは、ミュージカルが一時代になってしまったこと。
にあることを実感しました。

【銀幕倶楽部の落ちこぼれ】

日時:2010年04月05日 08:27

しとやかな獣 1962日 川島雄三

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コメディですが、コメディとは思えない、人間の悪と
生きるためのしたたかさを描いた映画です。
たしかに面白い映画なのですが。考えてしまいます。
脚本も良いですし、人物描写や、カメラワークなど、
好みの映画で今年のマイベスト10に入るでしょう。

団地一軒の中だけで映画は作られています。
多種類のアングルと、時折外からのカメラや、外へのカメラを使い、
台詞以外でも人物を語ります。

内容は、あばしり一家のような家族と、
ひとくせあるその被害者たち、
そして、あばしり一家も舌を巻くほどの女の軋轢です。

言葉遣いが、まったく本音でない、から、オブラートに包んだ本音、
半分本音、かなり本音などその使い分けが妙です。
これらは、普段誰でも使い分けているのですが、
えげつなく描かれています。
でも100%本音はでないんですよね。この映画でも。
でもそれをお互いが理解しています。

笑うに笑えない映画でした。

【銀幕倶楽部の落ちこぼれ】

日時:2010年04月04日 08:34

眼の壁 1958平 大庭秀雄

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東京から田舎へと展開してゆくところ、
登場人物の素性があきらかになってゆくところ、
松本清張らしく面白かったです。

佐田啓二の落ちついた二枚目ぶりは、
当時かなり人気があったことを容易に想像させてくれます。

新幹線がない時代の旅、出張がどういうものなのか、
松本清張とふれると、そこにも思いが馳せます。
同じく通信手段も。

日本はがむしゃらに走ってきて、
今は大不況と言われますが、それでもまだ、
走り続けているような気がします。
直近30年くらいの自分の人生を思い返すと、
その流れに自分の生きてきた時間が重なります。

【銀幕倶楽部の落ちこぼれ】

日時:2010年04月03日 07:09

からっ風野郎 1960日 増村保造

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弱いくせに粋がって、社会を斜に見て、
負けるのがわかってリングに上がっているボクサーのように、
生きている主人公=三島由紀夫、
なにか自分と重なります。

サルのおもちゃを主人公に見立てますが、
それも自分と重なります。

弱いけど懸命に生きて、悪だけど根っからではないから、
分不相応な妻に見初められるのも、
自分と重なります。

素直になった直後に死が訪れました。
死に際のことを考えさせられました。

【銀幕倶楽部の落ちこぼれ】

日時:2010年04月02日 07:28

或る殺人 1959米 オットー・プレミンジャー

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人が人を裁くことには、矛盾があるのですから、
立場によりその結果は変わります。
今までもこれからも、裁判は人が裁くのですから変わりません。

この映画も、裁くことについて描かれていますが、
ただあまりにも不可解なことが多いストーリー進行でした。

その代わりと言ってはですが、
法廷闘争=検事と弁護人の二人の力が入ったシーンは、
とても良く、これ自体が後半のほとんどですから、
ストーリーは別にしても、引き込まれます。

疑惑を両者の言い分で推測し、有罪か無罪を決めるわけですから、
当事者以外は、(当事者を含む時もある)ことの真意はわからずに、
決めなければなりません。
その点では、不可解なまま裁判が進むのは、
映画的ではなく現実的だったとも言えます。
ただ、そこを狙ったようには思えませんでしたが。

【銀幕倶楽部の落ちこぼれ】

日時:2010年04月01日 07:15