干し芋タツマの商品一覧

2012年9月の“お宝ほしいも”

新品種「ほしキラリ」の平干し芋です。魅力ある美味しさですが、収穫量や作業性から生産量は増えそうにありません。

品質は上々の干し芋に適している「ほしキラリ」ですが、丁寧に作業する農家だけが作る干し芋になりそうです。

「ほしキラリ」は干し芋に加工されることを前提に品種開発されたサツマイモです。
昔は、保存性が優れていることが干し芋に対して求められる大きな条件でしたが、現在はそれよりも美味しさを求められているので、当然ほしキラリもそれをかなえることはもって生まれた使命です。

茨城県ひたちなか市周辺で、国産干し芋の約90%の生産があります。
その中心は「玉豊(たまゆたか)」です。
ほしキラリに限らず新しい品種は、この玉豊がたたき台となります。
玉豊よりいかに優れた特性があるかがポイントです。

玉豊には、くせがない万人受けする甘さがあります。
その年の出来にもよりますが、甘くて、しかもやわらかい干し芋に仕上がります。
しかも収穫量がそこそこ見込めることと、作業性が良いことも玉豊の利点です。
昭和35年に品種登録されてから干し芋産地で普及し、いまだに主力品種であることから、玉豊は優れた品種であることがわかります。

玉豊と並んで、玉豊よりも古くから干し芋用のサツマイモとして生産されている品種として「いずみ種」があります。
こちらは玉豊を凌ぐと言われている美味しさから、産地でもとても人気があるのですが、玉豊ほどに普及しないのは、玉豊よりも少ない収穫量と、玉豊よりも作業に手間がかかるからです。

そのことからもわかる通り、「ほしキラリ」をはじめ新しい品種が「玉豊」にとって変わるハードルはとても高いということになります。
そんな万能に見える玉豊ですが、欠点はあります。
それは、雨が少ない日照りの年は、製品率がとても低くなることです。
産地ではシラタまたはパカと呼ばれる、デンプンが糖に変わりづらいサツマイモ(玉豊)に育ってしまうことです。
シラタ(パカ)が多くなる年は、いかに収穫量が多い玉豊でも、製品の干し芋に仕上がる量が極端に減ってしまいます。
そこでほしキラリは、そのあたりの改良もされてきました。

玉豊にとっての栽培環境が良い年にできた美味しい玉豊干し芋と、同等かそれ以上の品質で、しかもシラタが少なく、作業性も良いことが「ほしキラリ」に課せられました。
確かにそのあたりは満たしているといえそうです。(まだ栽培暦が短いので定説ではありませんが)
いずみ種もシラタは少ないのですが、ほしキラリの方が作業性が良いのも事実です。
しかし、ほしキラリはスライスした後の簾(すだれ)に並べる作業に非常に手間がかかります。このあたりがネックになることがわかってきました。

そして、普及に大きな影響を与える収穫量ですが、これはやはり玉豊にはとても及びません。
確かにシラタが出ないのですが、ここが改善されないと作付けは増えないでしょう。
ただしこれに関しては、栽培方法に工夫の余地がありますから、今後の課題で克服できる可能性はあります。

結論ですがやはり収穫量で決まりそうです。
現状の感じだと玉豊のような生産量になることはなさそうです。

今回はほしキラリの平干し芋です。平干し芋は一番作業がしやすい干し芋ですが、ほしキラリはここでひと手間かかっています。
けれど甘みがありやわらかく、かつ、サツマイモの風味も味わえます。捨てがたい品種です。
繰り返しますが、平干し芋の作業性にひと手間あると敬遠する農家が多いのは避けられません。
このほしキラリ平干し芋も、どんな農作業も丁寧にこなす、照沼良成さんが作りました。
今後も、こういう農家専属の干し芋になるような気がします。

まだ栽培が始まってまもない品種です。
今後栽培方法の改良と、作業の仕方の見直しで増えるかもしれませんし、その美味しさは、作り続けられてもおかしくない魅力がある品種です。

今年は自社の有機農園でも作付けをしています。
“有機ほしキラリ干し芋”をお届けしたいとも考えています。

2012年8月31日 株式会社タツマ 福井保久