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いもたつLife

【spac演劇】天守物語 宮城聰演出

10年以上前に「天守物語」を観劇していますが、その時との演出の違いは覚えていません。今回久しぶりに観てSPACらしい、宮城總さん演出らしい天守物語でした。

白鷺城の第五重は魔界の世界で、その富姫と、人間界の図書之介が恋に落ちます。
異世界のモノどうしが惹かれ合うのは宇宙戦艦ヤマト等のSFと同じです。制約があるがゆえにその恋が加速するのは、ロミオとジュリエットでもみられます。また差別を超えていく恋は招かれざる客等、枚挙に暇はありませんし、この映画は1967年ですからまだたった56年前に、この天守物語と同じ葛藤が身近に感じられていたということでもあります。

さて富姫と図書之介ですが、本人たちの気持ちがすぐに適う訳はありません。失明や命の危機にも陥ります。しかし大いなる力は二人を救います。
これは人間の歴史でもあると感じました。
人間社会は全くの未熟です。でもとても良い所もある。
争いは絶え間ないけれど、ほんの少しずつではあっても変わっているのも間違いではない、それは、大いなる力ともいえるのではないかと思いました。

それはさておき、魔界の世界の大騒ぎや大団円となるSPAC天守物語はこいのぼりの衣裳や獅子舞をはじめとし、美術、そして力強くもありしみじみとも響く音楽、観ていて楽しいです。また役者たちの動きも素晴らしい劇でした。

【いもたつLife】

日時:2023年05月10日 12:40

【spac演劇】XXLレオタードとアナスイの手鏡 チョン・インチョル演出

スクールカーストを扱っていますが、かなりコミカルでまるで問題なしとの雰囲気を醸し出していますが、かえってそれが問題の根深さを感じます。
この劇は2014年のセウォル号事件がきっかけで制作されたとのこと。事件は韓国に巣くう歪が露わになり、それらが劇中に盛り込まれているようです。
ですから、一見なにげなさの中に波乱がふくまれていると解釈しました。
また、舞台は三方が壁で被われていて観客席にだけ開かれています。舞台から楽屋に行けない構造です。閉鎖された空間はスクールカーストを産む土壌であり、ひいては韓国社会のかつてのありようなのでしょう。
その三方塞がれた舞台では観客席から登場した役者たちは劇中ずっと舞台上です。演技をしていない時でもそこにいるということは、直接の関係がない時も、他の役者に影響を与えている効果が出ると解説されていました。
確かに、人間関係というのは直接のやりとりでだけで関係が出来上がるわけではありません。それを強調している演出でした。
重たいテーマではありますが、とても見やすくてところどころ笑いが起こります。80年代のコミカルな日本映画を私は連想しました。

【いもたつLife】

日時:2023年05月09日 12:39

【spac演劇】ハムレット(どうしても!) オリヴィエ・ピィ演出

4人の俳優(とミュージシャン1人)があのハムレットを演じるのですが、要所要所分解して世界的な哲学者の解釈をいれて、ハムレット自体を考察する演劇です。

語りつくされたハムレットを、世界一有名な台詞「To be, or not to be, that is the question.」をはじめ数々のシーンや歴史を踏まえた前後の状況、登場人物の立場等で、シャイクスピアの真意に迫ります。
哲学的な考察ですが、劇はあくまでコミカルでユーモアに溢れています。

そのハムレットの分解を単なる議論の題材として料理しているだけでなく、演劇の素晴らしさにも言及しているのが、この劇の語り方でもあります。
人間の存在とはという大上段な問いを演劇賛歌に軟着陸させていました。

【いもたつLife】

日時:2023年05月08日 16:52

【spac演劇】アインシュタインの夢 モン・ジンフイ演出

アインシュタインが残した手紙とカフカの「田舎医者」を題材に、10人の男女が舞台上で踊りを交えた不条理劇です。
時間が止まったり空間が変化したりが表現されることがアインシュタインの夢足ることで、「田舎医者」が断片的に語られるのも夢の世界でもあります。
さて時間や空間がままならないこの世界に自分の身が置かれたらと問われているように感じます。そこには実は日常は変わらない、やはりこの世はままならないと言わんばかりです。
劇の最後10人の男女は、この空間にいる衣装を日常着に着替えて旅支度をします。
そうです、そこから抜け出すのも自分次第なのです。

物理学は哲学でもあります。この劇は抽象的に生き方を語っていました。

【いもたつLife】

日時:2023年05月07日 16:47

THE FIRST SLAM DUNK 井上雄彦

ところどころ実写ではないかと思えることに感動です。アニメだから人物の動きや造形を自由にできるからこそ、バスケットボール素人がみていると、実際のプロの試合よりも、バスケットボールって、こういうスポーツなんだと解るように造られているようです。

物語はスポーツものとして王道です。男臭くてシリアスで、時折のユーモアがそれをより味合わせてくれます。
観て良かったです。

追伸
4/6は「清明」です。二十四節気更新しました。
ご興味がある方は、干し芋のタツマのトップページからどうぞ。
干し芋のタツマ
二十四節気「清明」の直接ページはこちら
清明

【いもたつLife】

日時:2023年04月06日 11:14

【国立劇場 3月歌舞伎】入門 源氏の旗揚げ/一條大蔵譚/五 條 橋

「平家にあらずんば人にあらず」の頃から、牛若丸と弁慶が五条橋で出会い義経が「源氏の旗揚げ」をするまでの芝居です。
虎視眈々と源氏再興を狙う大蔵卿と常盤御前を描く前半から後半は牛若丸の艶やかで力強い舞です。
平家側は大蔵卿も常盤御前も疑っていて二人はそれを前提条件に耐え眈々と準備をする、その駆け引きは創作ではありますが、心をそそらせます。

歌舞伎では源平の時代物がおなじみですが、史実になぞっていることに加えて工夫をこらした脚本にしているから人気があるわけが解ります。
そして同じ演目でも、いつだれが出演し、どんな演出を凝らしたかという本歌取りの要素がまた良いです。しかし、まだそれを味わえるまではできませんが、そんな視点での鑑賞も面白いです。

【いもたつLife】

日時:2023年03月31日 15:09

【3月大歌舞伎】髑髏尼/夕霧 伊左衛門 廓文章 吉田屋

髑髏尼は、新歌舞伎というジャンルになるそうで、その通り現代劇にかなり近い演出でした。それでも歌舞伎ならではの舞台、衣装です。物語も歌舞伎らしく源氏と平家にまつわるもの、新中納言局が、平重衝との間の忘れ形見の髑髏を常に抱えていることから髑髏尼と呼ばれています。寺守の七兵衛という醜い男が髑髏尼に恋こがれています。
シチュエーションからしてゾクゾクし、案の定に悲劇です。その悲劇は情念が巻き起こしていて、そこには昔の日本人の美徳を感じます。

夕霧はダメ若旦那 伊左衛門と恋仲の花魁。伊左衛門と夕霧との廓話で、夕霧の衣装が艶やかで豪華なところが見どころです。また、コミカルで楽しい芝居です。
ハッピーエンドは良いのですが、伊左衛門のその後が気になります。
登場人物に、吉田屋の主人が出てくるのですが、金の切れ目が縁の切れ目にしなかったことから、吉田屋には福が来ます。世の中上手くできています。

【いもたつLife】

日時:2023年03月30日 15:08

【SPAC演劇】人形の家 宮城總 演出

ノーラが“ねばならない”で生きてしまう超自我に支配されていたことを身に染みてしまい、ヘルメルに言う台詞、「3人の子供たちは人形で遊び、私は子供たちと遊び、あなた(ヘルメル)は私と遊んでいた」。
ではヘルメルは誰に遊ばれていたのか、この劇では戦前の日本が舞台ですから、当時の社会を支配ししてた大日本帝国軍ということになるのでしょう。

いつも社会は、生きやすくするために“ねばならない”をいつの間にかたくさん我々に植え付けます。それは秩序のため、経済のため等々、多分それで我々が多くの恩恵を受けているし、安全も確保されていることでしょう。

ではその“生きやすさ”はその時代時代で誰が何のために決めているのか?
歴史はそれが機能しなくなった節目を、例えば徳川政権が、例えば明治政府が、例えば大日本帝国の敗戦が教えてくれます。

このspac版人形の家は、また日本が今後どこに向かうのかに“盲目にならない”ことを声高に伝えているようでした。

【いもたつLife】

日時:2023年03月23日 11:53

日本の名句・名歌を読みかえす 高橋順子 著

誰もが知る名句・名歌が美しい背景に乗せられていて、その句の背景と作家の生い立ちが解説されています。
句ができるまでには、その作家が歩んできた人生がある訳でそれはどちらかと言えば苦悩です。だから名句は多くの共感を呼ぶのでしょうし、普遍でもあります。

それをさらっとした感じで紹介されていることで、様々な情景が浮かびます。
同時に日本語の良さも改めて認識できました。

【いもたつLife】

日時:2023年03月17日 14:04

【シネマ歌舞伎】二人藤娘/日本振袖始

生観劇とシネマ歌舞伎の違いは、役者を衣裳をアップで観れるところです。この演目二つはそれがあることで十二分にシネマ歌舞の価値ありです。

二人藤娘は、坂東玉三郎さん、中村七之助さんが美しい。うっとりします。
打って変わって日本振袖始では坂東玉三郎さんが醜い八岐大蛇になります。そして豪快でもあります。それに立ち向かスサノヲの尊の中村勘九郎さんが格好よい。立ち回りも迫力ありでした。

冒頭では坂東玉三郎さんの二つの演目の解説が入りました。これもシネマ歌舞伎ならではでした。

【いもたつLife】

日時:2023年03月15日 14:01