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ブログ 今日のいもたつ

越後つついし親不知 1964日 今井正

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親不知がある越後の部落の、時は昭和12年から13年の物語です。

主な登場人物は3名。主人公おしん(佐久間良子)は、幼い頃に両親を亡くし、
方々で働き苦労の末、働き者の留吉(小沢昭一)の女房になりました。
留吉と権助(三國連太郎)は伏見の造り酒屋に出稼ぎに行っていたのですが、権助の母が危篤で権助が村に一時帰郷します。
その時に権助はおしんを犯します。運悪くおしんは妊娠、彼女は悩みに悩みます。
春になり留吉が帰り、おしんの懐妊を喜びますが、権助の子とわかり、気が狂ってしまったかのようにおしんを殺害します。
正気に戻り人知れずおしんを葬った後、出征祝いの隊列の権助を親不知から突き落とそうとして、二人で海に落ちます。

救われない話です。
そして、なすすべもない立場のおしんの境遇に悲しくなります。

堕胎しようとするができない。
犯されたことを村人に言ってもたぶん取り合ってくれなかったでしょう。(推測ですが、合意だと判断されると感じました)
かといって留吉にも言えない。しかも留吉は大喜びです。

おしんは少女時代から苦労の連続でした。苦労を重ねてやっと留吉との縁があり、
やっと人並みの暮らし(貧しいですが)を手にしたばかりでこの顛末です。
何のための人生だったのか?と考えずにはいられません。

残念ながら生まれてきた境遇を覆すことができるなんて稀です。

今人は豊かになり万能であるような錯覚を覚える位、何でも自分の思い通りになる世の中ですが、こんなものは自分の力では全くありません。
幸運にも、たまたまそういう世の中に生まれてきただけだと再認識しました。

今井監督の演出はこの映画でも上手いです。
冒頭の権助がおしんを犯す伏線の東野英二郎との会話、ここで権助の動機付けと共に、物語の背景を説明します。
また、おしんと留吉が婚礼の日、豪華な輿入れとすれ違うようにして、二人の質素な輿入れがあります。
それ以外にも、留吉が誤っておしんを殺害してしまい、遺体を運ぶ時にすれ違う子供達。
これら主人公達の気持ちをシーンで代弁させたり、何気ない日常と、起きてしまった異常の対比で効果を高めています。

脇役もそうそうたるメンバーで、贅沢な映画でもありました。

そして、造り酒屋での仕込みの映像や、雪国での冬から春の農作業の映像や、荒れる日本海の風景等々、印象に残る貴重なシーンも多くありました。

【銀幕倶楽部の落ちこぼれ】

日時: 2014年10月27日 07:21