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ブログ 今日のいもたつ

事件 1978日 野村芳太郎

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現実的で実を取った妹(大竹しのぶ)のしたたかさが、
ラストを飾ります。

映画は、法廷の熱く知的な駆け引きに力が入り、
魅了もされます。
原作も脚本も良いし、主だったキャストの熱演の賜物でしょう。

裁判をメインに扱う作品ですが、今よりも司法を崇高に扱うように感じます。
司法を信じている雰囲気があります。
これは時代の流れで、今の私たちの方が司法に幻滅している、
そんな危惧も感じます。
ただ、この意見はとても私的なものですので、ご考慮ください。

次第に当事者の本心が現れる過程が見どころです。
殺した男(永島敏行)は憐れむべきキャラクターから憎むべきキャラクター
に移送します。殺された女(姉)(松坂慶子)はその逆です。

その二人を遠目で、わが身をしたたかに守る妹がたたずんでいます。
妹は、母が犯した間違いと姉が犯した間違いの轍を踏まぬことが最重要として
行動しました。

妹は手に入れた幸せを謳歌できそうな雰囲気でラストですが、
私個人の鑑賞後の後味は、やがてこの妹も、
母や姉の間違いを踏むような気がしてなりませんでした。

なぜなら、男を非情に追い込むまでのしたたかさがあれば別ですが、
そこまでの非情さはありません。

そして、男は混乱の言葉を発していました。
その言葉に対して「発する声と現実の行動は別」と
裁判官も検察も弁護人も裁判の結果がどうあれ安堵していました。

だが男は、その言葉を実現させる男だったから、
この【事件】は起こったのです。

【いもたつLife】

日時: 2009年06月09日 07:16