月別記事

ブログ 今日のいもたつ

いもたつLife

【SPAC演劇】イナバとナバホの白兎 宮城總 演出

3度目の上演です。
2016年が初演、2019年が二度目の公演で、今回3回目です。

この作品は、フランス国立ケ・ブランリー美術館の開館10周年の記念公演のために、SPACに創作依頼されて出来たものです。
創作のきっかけは、レヴィ=ストロースの最後の著作「月の裏側」に出てくる仮説です。

「因幡の白兎」をはじめとした日本の神話が第一部、アメリカ先住民ナバホ族の神話が第二部、この二つには繋がりがあり、もっと言えば世界に広がった関連ある神話の大本がアジアのどこかにあるだろいうというレヴィ=ストロースの仮設を、SPACがその大本を創作するという野望とも無謀ともいえる宮城さんのアイデアがこの演目のきっかけで、これをもって「クロード・レヴィ=ストロース劇場」のこけらおとしの上演に持っていったのが2016年です。
その当時の創作の模様をアフタートークでたっぷりと聞けました。
なにしろ本家本元へもっていく創作演劇の創作ですから、いつもの作り方とは異なり、本当に“無”から、まずは世界中の神話をスタックと俳優で調べあげるところからのスタートとのこと、そして感心したのは、レヴィ=ストロースの構造主義を演劇として具現化するということにも挑戦していたことでした。
種を蒔く、畝を作る、これらの普遍的な行為を演劇に落とし込むときにそれを、構造主義を取り入れたということで、重ねる言葉や重ねる音楽はその成果だったことに感動も湧くアフタートークでした。

そして今回の演劇は、筋肉質になっていたという印象です。力強いパフォーマンスはそのままに、ひとつひとつの演技、ムーバーの立ち居振る舞いが、スピーカーの言葉が、そのシーンを想像させる力が強くなっているのです。

この3回目の上演は初回メンバーと顔ぶれがかなり異なっていましたが、この演劇の成り立ちと概念はしっかりと受け継がれています。それも素晴らしいです。

追伸
11/7は「立冬」です。二十四節気更新しました。
ご興味がある方は、干し芋のタツマのトップページからどうぞ。
干し芋のタツマ
二十四節気「立冬」の直接ページはこちら
立冬

【いもたつLife】

日時:2024年11月07日 16:35

【グランシップ 文楽 2024】

【昼の部】 「二人三番叟」、「絵本太功記」~夕顔棚の段~尼ヶ崎の段
楽しい舞踊から始まり、明智光秀を主役とした時代ものです。
暴君信長を討つ光秀はやむに已まれず、そして秀吉はその光秀の心情を量るという戦国武将それぞれを称えるこの頃の社会がみてきます。
それを文楽は人形と浄瑠璃で表現するのですが、この劇のクライマックスの壮大さは素晴らしかったです。

【夕の部】 「近頃河原の達引」~四条河原の段~堀川猿廻しの段
こちらは世話物です。まず理不尽な行いが起こるのですが、お決まりではありますが、じっくり見える演出で引き込まれます。
猿回しの団は、題名通りとても楽しい猿回しがあります。その前には人形と三味線が一体となったこちらも楽しい芸があります。これも文楽ならではです。

今回の演目で、義太夫語りと三味線が場面ごとにかなり大胆にかつ繊細に演じ分けていることを今まで以上に感じました。少しは文楽を、浄瑠璃の見事さが解るようになってきたようで嬉しいです。

【いもたつLife】

日時:2024年10月27日 09:31

【9月 新国立劇場 文楽】

社会人のための文楽鑑賞教室と銘打っての公演です。

*伊達娘恋緋鹿子 火の見櫓の段
まずは口開けという感じの短い演目ですが見どころは満載でした。
義太夫二人と三味線三竿、そして艶やかなお七です。
100年前に考案された人形遣い3人ともに消える梯子登りは素晴らしいの一言です。

*解説 文楽の魅力
一幕を見せてからの解説ですから聞き入ります。今までもこの手の解説を何度か聞いていますが、今回も細かい人形の仕組みに日本の古典の歴史や知恵、継承を感じました。

*夏祭浪花鑑 釣船三婦内の段・長町裏の段
昼の部の歌舞伎と同じ演目で、まず団七の全身入れ墨をどう人形で表すかに注目していましたが、いやはやこの文楽と言う人形浄瑠璃はなんでも表現できることに驚きです。
それは歌舞伎でも団七が義平次を、どうしても殺さなければならない逡巡とそれを執行する時の狂気がクライマックスで、この場面の鬼気迫る人形は人が演技する以上ではないかという人間が切迫した時そのものでした。

文楽の凄さを堪能しました。

【いもたつLife】

日時:2024年09月30日 09:22

【9月 新国立劇場 歌舞伎】

*夏祭浪花鑑 二幕三場
序幕 住吉鳥居前の場
二幕目 釣船三婦内の場 長町裏の場

中劇場での歌舞伎と小劇場での文楽を、同じ演目で観られるという企画です。まずは歌舞伎です。

江戸時代に生きる感覚として「男が立つ」「男が立たない」というのがあります。この芝居もそこがポイントで、でもそれは男に限らず女もです。
一見「武士は食わねど高楊枝」のようなきっぱりとした気風であり清々しさのイメージがありますが、実はその男が立つ立たない自体が独り歩きもしてしまいます。
そんな市井の輩と女たちの生き方が活き活きと描かれます。それはドロドロした人の性までです。
団七は義理の親の義平次を殺めるのですが、ギリギリのところまで耐えて、でも臨界点をこえてしまいます。
ここには打算がなかったか。少なくても現代の感覚でのずるがしこさは感じません。
当時嫌な奴もたくさんいたのは今も昔も変わりません。
でも根付いていた「男とは」「女とは」は、かなり違う価値観であったことを実感する歌舞伎で、その演目でした。

【いもたつLife】

日時:2024年09月29日 09:21

【9月大歌舞伎】

人気演目2本立てです。
*妹背山婦女庭訓 太宰館花渡し
*妹背山婦女庭訓 吉野川
今回の見どころの一つは定高を玉三郎が務めることです。その相手役となる清澄の松緑も堂々と渡り合っていました。ちなみに入鹿は吉之亟、久我之介は染五郎、雛鳥は左近です。
“吉野川”は何度観ても辛い名場面です。
一つ一つのシーンを丁寧にじっくりと堪能させてくれました。

*歌舞伎十八番の内 勧進帳
これも名作、本家の歌舞伎で必ず観たい演目でした。そして見どころたっぷりでした。
幸四郎が迫力ある弁慶を演じ、それを後押しする長唄も素晴らしいです。
黒澤明が「虎の尾を踏む男達」での演出は歌舞伎をリスペクトしていたことが解りました。

【いもたつLife】

日時:2024年09月23日 08:56

平野富山展 静岡市美術館

静岡の清水にゆかりがある平野富山展で、彩色と木彫の素晴らしさ、芸術を堪能しました。

取り壊しのため昨年通った国立劇場の「鏡獅子」は田中と富山が制作したと知りそれに関連する展示を楽しみにしていました。
その制作の様子も見どころでしたが、なんといっても身近に観る彩色された木彫は、その質感といい、木彫ではなく、本物の着物のようにしか見えません。
極めるとはこういうことなのかという想いが常に頭をよぎりました。

【いもたつLife】

日時:2024年07月15日 09:29

立川吉笑独演会:グランシップ

上手いし面白いです。
枕たっぷりで二席「狸の恩返しすぎ」と「床女防」、
仲入り後も枕から入り一席「一人相撲」でした。
どれも、古典落語の世界観を再現させた中での新作というかオリジナルで、談笑師匠の古典落語の改作とは違った組み立てで、独自の芸になっています。
師匠談笑はもちろん志の輔師匠の構造も取り入れているようにも感じますし、かなり勉強熱心の戦略家ということが解ります。

枕も当然の様に面白く、芸に勢いがあります。また、関西弁を使う使わないを分けているのも上手いです。

出迎えから送りも丁寧で、場作りもしっかりと考えられていて、吉笑さんの好意も得ての撮影会や抽選会迄催してくれました。その主催者の落語愛もひしひしと伝わってくる会で、感謝です。

【いもたつLife】

日時:2024年07月04日 10:33

【6月大歌舞伎】

一、 南総里見八犬伝(なんそうさとみはっけんでん)円塚山の場
若手俳優 八犬仕の揃い踏みです。衣装と美術も凝っています。劇自体は“だんまり”をじっくりとみせます。
今回はさわりでしたが、これだけでは勿体ない、大作として上演して欲しい演目です。

二、 山姥(やまんば)五代目中村梅枝 初舞台
萬壽、時蔵、梅枝の劇中口上が入ります。
物語も面白く、それを初舞台にも関わらず梅枝が引っ張ります。そして萬壽の舞踏は流石の芸、時蔵のあでやかさも目が離せません。
見どころ満載でした。

三、 魚屋宗五郎(さかなやそうごろう)初代中村陽喜 初代中村夏幹 初舞台
山姥で口上があった陽喜、夏幹はこちらの劇でも初舞台のおまけ付きでした。
落語を想わせる酒でがらりと人が変わる獅童演じる宗五郎が私的にはお気に入りで、苦笑いです。
色々な町人がいて、色々な侍がいて、もちろん良いものも悪いものもいて、それは現代も同じですが、こういう世話物を見ていると人情が今はもっとあった方がよいのではないかと思えてきます。

【いもたつLife】

日時:2024年06月24日 16:22

広上淳一指揮 NHK交響楽団 チェロ:上野通明

初めてのオーケストラの公演の体験でした。
圧倒されました。
素晴らしい音楽を素晴らしい演奏で聴ける心地よさは格別の時間でした。
「曲目」
ドヴォルザーク/チェロ協奏曲 ロ短調 作品104
ソロチェロ上野通明さんです。
休憩後
リムスキー・コルサコフ/交響組曲「シェエラザード」 作品35
アンコールは
ヘンデル:「水上の音楽」 から アラ・ホーンパイプ
また行きたいです。

【いもたつLife】

日時:2024年06月07日 16:30

BLANK PAGE 空っぽを満たす旅 内田也哉子 著

15人の著名人との対話が主ですが、亡くされたご両親、特に母親の希林さんの喪失が背景にあり、追悼にもなっています。そして死生観が見え隠れします。

生と死に境界線があるのか、死があるから生がある、遺された者が偲ぶのは記憶である等のメッセージは、死までの時間が近づいていることを意識している今、十二分に心に刺さりますし、その残された時間で生を全うするための示唆でもあります。
良い本でした。

【いもたつLife】

日時:2024年06月01日 16:23