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ブログ 今日のいもたつ

人情紙風船 1937日 山中貞雄

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長屋仲間の首吊りの通夜までも(大家にたかり)
宴会にしてしまう、
なかば世の中に流されながら、そして逆らいながらも、
生きることを続ける長屋の連中。

金持ちになり、欲や地位や権力を追う商人と侍。
それに寄生するヤクザ連中。

長屋に居て、どうしても仲間のように生きられない、
粋に生きたい主人公と、浪人侍は、
時に同じ気持ちになり、時にそれぞれが理解できません。
けれど、生き抜くことができないことは同じでした。

粋なままでいたい男、
本物の侍でいたい男と侍でいさせたい妻が、
死を選び終わります。
映画が終わった後は、また、ドンチャン騒ぎの長屋になります。

人間らしい描写が封じ込まれた作品です。

長屋、商人、セットも見事なら、
雨の撮影や光と影の美しさ、そしてカメラの構図も鮮やかです。
演技人も、江戸から抜け出てきたかのような素晴らしさです。
落語の名人の噺とも重なりました。

テンポ、リズム、人間の悲哀や欲望、そして優しさと虚しさ、絶望が、
詰め込まれた。評判どおり、期待以上の作品でした。

【銀幕倶楽部の落ちこぼれ】

日時: 2011年10月11日 07:21