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ブログ 今日のいもたつ

貸間あり 1959日 川島雄三

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主人公のフランキー堺は、幕末太陽傳の佐平次に重なります。
やはり川島雄三監督は己を重ねているのでしょう。

アパートの住人が、皆ありえない程個性的です。
住人でない小沢昭一も含めて。
そのキャラクター設定も抜群だし、
人物を絡めて物語を展開し、
多くのエピソードを入れて、
尚且つまとめてしまう手腕に拍手です。

これだけ盛り沢山なのに破綻しません。

そして、川島雄三の「さよならだけが人生さ」が強調されるので、
喜劇の中に醒めた感覚があります。

長屋(アパート)の住民は、憎くて可愛い奴たちです。
人間良いだけにはなれないのだから、
これくらい爆発してても良いかもと思ってしまいます。

主人公は、何でもできる自分が嫌いです。
人のために尽くすことを、厭わないのですが、
そこまでです。人とはそこまでとしている感じです。
恋人役は淡路千景です。
美人で聡明で彼女ほど尽くしてくれる女はいないタイプです。
その恋人から愛されることからさえ逃れます。

監督の厭世観でしょう。
でも映画はそこから生まれる人の様と、
そんな主人公を慕う長屋の奴らの
「不平不満を言いながら生きる」貴さをさらっと、
駆け抜けるように仕上げます。

やっぱり川島雄三の映画は凄いです。

余談ですが、「めぞん一刻」はこの映画に捧げられているのではないでしょうか。

【銀幕倶楽部の落ちこぼれ】

日時: 2012年07月02日 07:33