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ブログ 今日のいもたつ

ソハの地下水道 2011独/波 アグニエシュカ・ホランド

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1943年ドイツに占領されていた
ポーランド領のルヴフという街での実話がベースの映画です。

下水道工のソハが、ユダヤ人を匿います。
ソハはコソ泥で、
ユダヤ人を匿うのもカネをせしめる事ができるという動機からです。

ルヴフでもドイツ軍によるホロコースト真っ最中という時代ですから、
匿うソハも、隠れるユダヤ人も命がけです。
特にソハは簡単に見捨てる事を選べる立場です。
だから、匿う価値がある限り付き合うと決めていたはずでした。
それが次第にソハ自身も意外で説明できない行動となって行きます。

この映画では、ドイツ軍の残虐な描写は必要最低限という印象ですが、
あの目を伏せてはいけない事実の上の映画という位置付けははっきりとさせます。
その中で人が、ごく普通の中年男がどう生きたかそれをじっくりと観せます。

人が奮い立つ、理屈ではなく、
ソハも徐々に変化します。

選んだ選択の一つ一つは、いつも、自分にリスクがあることでしたが、
『これ位ならできる」という積み重ねでした。
だから自分の中で大きな賭けではないと納得したものです。
(大きくなくても命がけなのは言うまでもありません)

ある時ソハの女房がソハの秘密を知った時の、
ソハとのギャップは相当なものでした。
彼女は何度もソハをなじります。
(命を守るために正そうとする行為です)
そして、ソハを捨てようともします。
でも結局できません。
二人共出来ないとやれないが半々だったのでしょう。

ソハをみていると、やりきったことの結果が崇高だった、
のです。
最初から狙ったわけではありません。
だから普通の人が奮い立った結果です。

人は、生きると言う本能の中に、
一瞬でも良いから心を通じ合わせている他人と、
今、を生きたいのでしょう。

結局は女房もソハを支えます。
地下にいる会ったこともないユダヤ人達のために。

映画のラストに、あの中でユダヤ人を救った人達6000人を、
イスラエルが感謝したことが示されます。
ほとんどがソハのような普通の人でしょう。

不安な世界の現代に、希望を灯す、映画です。

【銀幕倶楽部の落ちこぼれ】

日時: 2012年12月02日 10:12