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ブログ 今日のいもたつ

秋のソナタ 1978米 イングマール・ベルイマン

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ほぼ4名の人物がひと部屋内で繰り広げられる、
愛憎劇、復讐劇です。

母は名声を得た芸術家です。
しかし幼い娘二人と夫を捨てた過去があります。
主人公は長女、母からの愛情が欲しくても受けられなかつた彼女が、
母を許そうと、7年ぶりに母と合う設定をしましたが、
赦すことができず、母との会話で自己を抑制できず修羅場になります。

もうひとりの娘、次女は脳性麻痺で、長女が育てています。
母にとって次女は、負の遺産です。
長女にとっては、母が犯した罪の象徴が脳性麻痺の妹で、
施設に入れておきたい母の欲望を逆なでするために、
引き取り育てています。
でも長女のその感情は封印されています。

長女の夫が4人目の人物です。
この物語では、母と娘が憎しみ合う愛憎劇で、
娘が母を相手にした復習劇です。
その二人の心情の機微を補足するための役割です。

娘(長女)は芸術家として、女として偉大な母に憧れていました。
いつも、いつも。
しかし、その裏返しの仕打ちしか受けられませんでした。
母は、愛することを知らない、できない女であり妻であり、母でした。
その悲劇が、露になる一日の物語です。

母と娘の痛い罵り合いの応酬です。
次女が時折発作で呻きます。
母を制するように。

人が持つ本性というか、
自己を生かしておくために必須の貯めこんでいた感情が、
今まで生きてきたことの清算のように、暴発します。
お互いを赦すという名目で。

こんなにも人は愛情を必要とするのかというような描写です。
愛情が必要だから、得られない代償が憎しみに変わり、
それが生きる支えになることを、
イングマール・ベルイマン監督は、
赤裸々に、そして、憎むべき相手に対して、
最も痛烈な言葉で相手を撃つという表現です。
すごい映画でした。

母はイングリッド・バーグマン、最後の映画です。
娘はリヴ・ウルマン、
二人とも熱演でした。

【銀幕倶楽部の落ちこぼれ】

日時: 2013年06月09日 08:21