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ブログ 今日のいもたつ

銀の匙 Silver Spoon 2013日 吉田恵輔

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この物語には“別れ”がたくさんあります。
改めて、別れが人を大きくしてくれることを教えてくれます。

舞台は北海道帯広の日本一広大な農業高校(蝦夷農)です。
登場人物は、大自然下の農学校生と先生と父兄、そして馬、牛、豚、鶏の家畜と競走馬です。

主人公の八軒は札幌一の進学校を挫折、父親との確執から全寮制である蝦夷農に進学します。周りは酪農農家の後取り達なので一人浮いた存在です。その彼が仲間や厳しい酪農業の世界を体験して成長します。

私も農業の体験がなく、でも今は干し芋農家をしていますが、やはり驚くことが多かった体験があります。八軒も思いもよらない体験、農業の厳しさ、経済原則を学ぶのですが、農業の中でも酪農の方が普通の農業より大変でしょうから、彼が孤独を乗り越える必死の姿(あまり大変なところは映らなかったので想像して)に賞賛します。

まず彼は、父親との別れがありました。
その後、入学してすぐに出会った子豚との3ヶ月後の別れ(豚の食肉への出荷)がありました。
それ以外にも、離農してしまう親友になった同級生(駒場)との別れ、
彼女になりそうなアキと一緒に育てた馬キング号との別れがありました。
また、離農による生家や育てていた家畜と駒場の別れも描かれています。

ここに登場する人びとはいつも別れを前提に生きている人達です。
別れは辛いもので、なるべく避けていたいのが人情です。

また、この物語は“逃げる”ことの再定義をしています。
一般的に逃げるのは良くないこと、失敗という価値観を持っています。けれどこの物語では、仕切り直しの一環だとします。
これには大きく同意です。
結果的に自分から積極的に選んだとしても逃げることはあまりやりたくありません。
しかし、逃げる方が良いという時、そしてそれが意図して判断されたなら、一般的な逃げるの意味を持ちません。そこに言及しています。

だから、駒場の離農は逃げるではなく、次へのチャンスを掴む第一歩です。
それを諭された八軒は、逃げてきたと思い込んでいたこと=自己の否定から解き放つために周りに尽くすことを決めます。(それがクライマックスの蝦夷農祭のばんえい競馬のプロイデュース、成功で描かれます)
それを後押ししたのが別れです。
八軒は別れがあることに意識的になることで、いてもたっても居られなくなりました。
入学以来どちらかと言えば失敗の連続、自分の力のなさを味わいます。しかし夏のバイトと豚の出荷(別れ)で、自分でもできることがあることを学びます。
そして、駒場との別れ、キング号との別れを目前にした時に自分という存在ができる精一杯を試しました。

死別をはじめ別れは悲しいことです。
だからなんとかそれを避けようとします。それは問題ありません。
けれど、最後には対峙することを心に期すことが大前提です。

この物語の八軒は成長しました。やっぱり別れは人を大きくします。
私は良く死ぬための死生観を持つためにも別れがあるのだとも思いました。

追伸
4/4に、4月の「毎月お届け干し芋」出荷しました。
今月のお宝ほしいもは、“ほしキラリ角切り芋”です。
ご興味がある方は、干し芋のタツマのトップページからどうぞ。
干し芋のタツマ
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今月のお宝ほしいも

【銀幕倶楽部の落ちこぼれ】

日時: 2014年04月05日 07:25