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ブログ 今日のいもたつ

愛の嵐 1973伊/米 リリアーナ・カヴァーニ

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生存の保障が崩れてしまった中で生きることで、精神を破壊された女ルチア、
彼女を破壊した男マックスと二十年ぶりに偶然出会いました。
どうしてその男に身を寄せてしまったのかを図ることは到底できないので、
彼女の行動は彼女にはそれしかできなかったと思うしかありません。

そんな二人をはじめ、戦後12年経っても戦後なんてない人物が登場し、悲劇が起こる物語です。彼等の心に残るものを消すことは一生できないのだと認識するのが精一杯でした。

強制収容所で権力を振るう側にいたマックスは、支配された老若男女の中から美少女のルチアを見つけます。
仲間が次々とおもちゃのように殺されていく日々に、彼女はマックスの慰み者となり生き永らえます。

有名な指揮者の夫と幸せな日々だったはずのルチアでしたが、1957年、夫の演奏のために訪れたウィーンのホテルでホテルマンとして働くマックスと出会います。
一刻も早くそこから逃れたいルチアでしたが、どうしてもマックスから離れることが出来なくなってしまいます。
夫がウィーンから次の公演に旅立ってもルチアはマックスの下に残ります。

マックスはナチスの残党に警戒されていました。そこに強制収容所を知る生き残りのルチアが現れたので、彼らはルチアも警戒します。マックスとルチアは残党達に命を狙われてしまい、マックスのアパートに篭城になります。
収容所時代のような、監禁と命がいつ果てるかの恐怖の中で二人は過去に得た快楽を貪るようになります。けれど兵糧が尽きていくに連れて疲労する二人、どうすることもできず、死に装束としてマックスはナチス時代の軍服に、ルチアも収容所時代と同じような服を纏い、アパートを後にします。二人を待っているのは残党達からの引導でした。

常軌を逸したシーンが続けざまに続きます。
マックスもルチアも目の前の意識しかない表情です。
飢えた中で食料があれば貪る、相手と快楽を求める欲望が出ると体を求めあう。恐怖に襲われると狂ったようになる。
そして残党達も同じです。戦時の精神のままなのです。

命がいつ尽きるかも解らない中で破壊された精神も、
弱者をなじることで意識をつないだ支配する側にも壊れた精神という代償があり、
彼らには戦後なんてないのです。
死ぬまで戦時のような精神で生きているしかない、そんな映像でした。

深い深い傷しか残らないのが戦争です。

【銀幕倶楽部の落ちこぼれ】

日時: 2014年07月20日 07:14