月別記事

ブログ 今日のいもたつ

【SPAC演劇】ベイルートでゴドーを待ちながら

150509blogy.jpg

作・演出 イサーム・ブーハーレド ファーディー・アビーサムラー

二人芝居で、漫才のようで、落語「粗忽長屋」を思い起こすネタがあり、
上質な喜劇ですが、奥には演出家二人の死生観があります。
それは日本人には理解できない、レバノンでできた芝居ならではのものです。

天井からのスポットライトで、一人の役者が暗闇から浮かび上がります。
丸く明るくなった中で、右手で高々とVサインをしています。
そこにもう一人の役者が、その場所を奪おうとします。もう一人も、浮かび上がった円の中でVサインをしたいからです。

最初は明らかにスポットライトの円と、それ以外は暗闇という境界線があるのですが、
演劇が進んでいくと、境界線がなくなっていきます。

次に展開されるのは、<あいだ>です。
二人は二人だけで、二人との間に自分がいると言い出します。
最低3人いなければ、<あいだ>に入ることは出来ないというのが常識なのに。
そこからも二人は、いがみ合っているのか、仲が良いのか、わからない喜劇を演じます。
そして終には、一人の男は、死と生のどちらにいるのかが解らなくなります。

私達が引いている境界線はこの演劇には通じません。
日本での生と死と、ベイルート(レバノン)での、生と死は全く異なり、
常に足を一歩踏み入れているようなのです。
そんな状況を高々と笑いにしてしまうという、心が痛む演劇でした。

【いもたつLife】

日時: 2015年05月09日 08:34