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【SPAC演劇】冬物語 宮城聡 演出

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宮城さん(SPAC)お得意のムーバーとスピーカーでの二人一役の「冬物語」。
シェイクスピアではこの手法を封印していたと、演出ノートで知り、上演前から興味津々でした。

奥行きがあるとても凝った舞台、衣装も相変わらず素敵です。音楽もお得意の打楽器を中心に俳優が演奏します。まさしくSPACの世界でした。

シチリア王リーオンティーズが、妃のハーマイオニと大親友のボヘミア王ポリクセネスが浮気をしていると思い込み、嫉妬に狂い、妃も王子も王女も喪うけれど、16年の時が経て奇跡的に赦される物語です。

これをリーオンティーズが狂ったようになることからの悲劇の第一幕、シチリア編。
ここで休憩が入り、16年後のお祭りに華やぐ喜劇のボヘミア編が第二幕。
そして、奇跡が起こるシチリアでの第三幕という構成です。

二人一役は、悲劇と喜劇で全く違う表現です。
もちろん舞台の雰囲気と照明の明るさも音楽も違いがありますが、悲劇では無表情のようなムーバーで、スピーカーの声の大きさやトーンとのギャップがあります。
時に能面のようなムーバーは内に秘めた怒りや悲しみといった感情を敢えて封印することで、人の愚かさを嘲笑しているようにもみえます。
ただ唯一、ハーマイオニの付き人、奇跡を起こすきっかけとなるポーリーナがリーオンティーズを咎めるのだけは、ムーバーはその表情をスピーカーと合わせます。
かなり印象的で、悲劇が強調され第一幕が終わります。

打って変わっての第二幕は、楽しい劇となります。
舞台も音楽も始終明るく、けれどボヘミア王子フローリツェルと漁師の娘(実は棄てられたシチリア王女)パーディータの身分違いの恋の行方はかなり危ういという展開です。
でも若者は溌剌と主張します。
ここは希望を勝ち取ることは個の強さを得ることが必須と感じる場面です。

そして、フローリツェルとパーディータはシチリアに渡り奇跡が起こるのですが、ここはかなりシリアスな演出です。
たしかに、機転が効いたポーリーナとそれを受け入れたハーマイオニの心の広さ、そして幸運にも漁師に愛を与えられて聡明に育ったパーディータの明るさ、そして勇気あるフローリツェルの行動がハッピーエンドに繋がってはいるのですが、手放しで喜びを分かち合う演出にはなっていませんでした。

やはり喪ったものは大きい。そんなラストの演出です。

ここでキーになるのは、嫉妬に狂ったリーオンティーズが16年という歳月でようやく赦されることですが、シャイクスピアの時代の16年は途方もない歳月だったのでしょう。
そしてシチリアとボヘミアの距離も今とは全然違う距離感だったのではないでしょうか。

気が遠くなるくらいの時と距離という犠牲と危険に向かう対価がなければ果実は得られないと感じます。

それにしてもいつものことですが、とても丁寧にしっかりと作られているSPACの演劇です。

【いもたつLife】

日時: 2017年01月26日 09:18