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ブログ 今日のいもたつ

ある戦慄 1967米 ラリー・ピアース

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嫌らしい見応えがある映画でした。
途中、もうこんなシーンは長すぎる、もう終いにしろと言いたくなります。
それほど、見たくないものを見せます。
それは、個々人が持つ、触れたくない心を赤裸々にするからです。

日曜深夜のニューヨークの地下鉄に乗り合わせた乗客がその一車両の中で、二人のチンピラに絡まれるという設定なのですが、これが見事に、チンピラ二人を含めて、乗客たちの生き様を人には見せたくない心が抉り出されるのです。

チンピラ二人(トニー・ムサンテ、マーティン・シーン)はかなりの悪、そして二人が地下鉄に乗るまで訳有りの人達がその車両に乗り合わせます。

妻の実家で娘の誕生日祝いで過剰なサービスを受け不満を持っている夫の3人家族。
熱々でイチャイチャしている若いカップル。
息子に借金を断られ、だから最近の若い者はダメとばかりに不平を言う老人とその妻。
休暇中の若い軍人二人、一人はエリートで弁護士志望、もう一人は怪我もちで田舎から出てきた軍人。
冴えない高校教師とその夫を甲斐性無しと罵る妻。
アル中をなんとか克服しようとしている初老の男と、その後をついてきたゲイの青年。
白人を嫌悪している黒人男性と、そこまで毛嫌いしても良いことはないと、いつも男を治めている妻。

映画は冒頭チンピラ二人の悪ぶりを映し、その後の前半で、登場人物達の人となりを手早く丁寧に映します。
そして後半は乗客の車両にチンピラが乗り合わせて、イジメが始まります。帰途の駅まで我慢して乗っている乗客たちですが、途中からチンピラがドアを開かないようにして密室劇になっていきます。

ゲイの青年を手始めに、次々とイジメをしていくチンピラ二人、止めに入る男もいますが、逆に虐げられるという構図繰り返され緊張感が増していきます。

この映画の面白いところは、チンピラが単に悪さをして、見て見ぬふりをする乗客というだけの関係に迫るのではなく、チンピラのちょっかいを通して、それぞれの関係ある夫婦(恋人)関係のその人物のこれまでを露にするところです。

お互いがお互いにわだかまりがあり部分がこういう極度の緊張状態になることで、隠せなくなる人の性が炙り出されるのです。

その嫌らしさは誰もが大なり小なり自己の中で感じていることであり、自分の生き様を問われているようで、見ていて不快になるのです。

100分と言う尺で見事にそれをまとめている脚本と、機微に至るまでの真実味あふれる人の態度をしっかりと演出している秀逸さです。
カメラもアップを多用し、構図も縦横無尽で、ワンシチュエーションでありながら、飽きさせません。

登場人物を通じて、差別問題、格差問題と都会にくすぶる諸問題を描いてもいます。
とても嫌らしい、良い映画でした。

【銀幕倶楽部の落ちこぼれ】

日時: 2017年02月17日 09:16