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【spac演劇】大女優になるのに必要なのは偉大な台本と成功する意志だけ 演出:ダミアン・セルバンデス


演劇というのは役者と演出家だけでは成り立たないことを、この演劇では招聘するに当たってどうプロディースするか、どうすれば日本でこのパフォーマンスを伝えきることができるか、プロディーサーとスタッフという裏方さんのご苦労が成功を産んています。

選ばれた舞台はかなり古い、昭和30年代にもてはやされた、当時はモダンなレストランで、今は空き家です。
その雰囲気は、その古さになんとも言えない寂れた観があり、メキシコの豊かではない住人が住んでいる一室が重なります。
でもそこはきっとわいわいがやがやで、それを伝えるために入場前に観客にメキシコのラム酒が振舞われます。

狭苦しい待合室で飲むラム酒、場末に来てしまったと感じた後に会場へ。そこはもっと狭苦しい、暑苦しい空間で、観客を詰め込むだけ詰め込んで、二人の女優が演じる舞台は、観客の手が届く近さで、八畳ほどのこれまた狭くて暗い中で、突然始まります。

一人は言い方は悪いですがかなりのデブ。もう一人は対象的なやせっぽちの女性。
奥様と女中で、大声の早口で二人はその立場で言いたい放題、それがひとしきり続くと、実は二人は女優で、役の練習をしていたことが解ります。
終わると今度は、二人はお互いを褒め合います。
でも和気合い合いはすぐに終わり、今度は本気で罵り合いの喧嘩になります。
その激しさは、最初もかなりでしたが、それを超えるもので、よくもこんなに大きな声が、よくもこんなに相手を貶めることができるものだという激しさです。

そんなことは長くは続きません。あまりにもエネルギーが要りますから。
疲れた二人は大人しくなるのと同時に、お互いをまたもや労わり合います。そして添い寝となり終了です。

子供の頃、兄弟喧嘩をよくしたのですが、それが重なります。
すぐに喧嘩、でもそれはひとしきりで、疲れて、仲良くなっても、またいつの間にか喧嘩、その繰り返しだったことが想い出されました。

子供のその頃はその頃で真剣に生きていた結果、それがこの二人、大人になっても純粋で真剣に生きているのかもしれません。
場末の貧しい中で生き抜く力強さと自分の中にある子供の頃の懐かしさが洗い出されて触れた、そして心がなんとなく温まった劇でした。

【いもたつLife】

日時: 2018年05月23日 09:10