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【spac演劇】歯車 多田淳之介 構成・演出

芥川龍之介の最晩年の「歯車」をspac総監督の宮城さんが、多田さんに演出を依頼して誕生したのが、spac版“歯車”とのこと。演目も演出家も宮城さんの指名です。
さてその内容はですが、凡人よりも世界が観えてしまう芥川の苦悩が、目に見えないはずのその感覚が、舞台上に駆け巡る、そんな劇でした。

俳優は6名、その6名は主人公が見えるモノであったり、主人公の精神世界であったり、時には主人公自身と触れ合う家族や人物だったりするわけですが、主人公にとっての生き難さであることは終始一貫しています。

舞台セットも主人公の不安定さを具現化した交錯した傾いた床で、原作からの台詞の朗読が随所にあり、それがスクリーンに映し出され、最後に崩れるという、セットを含めて流れは常に不安を煽っています。

音楽も勿論主人公の心情を表すのですが、それは彼の中で囁かれる場合と、他者に対しての場合と、他者や外の世界からの場合で、音源と方向を変換させています。

まさに狂おしさを2時間味合わせてくれますが、要所ではユーモアがあり(音楽も含めて)、息抜きっせてはくれますが、まあ、なんと主人公は生きることは辛いことだを味わっていることを感じさせ、それは観ているものに感染していまいます。

芥川はきっと常人が使える脳みそとは段違いに使えた人ではないかと思えます。その使える分、物凄い量と質の作品を遺したのは事実で、その事実の影には、他者では見えることがない私達がいる世界の行き末や、人が生きることの難さも物凄く受けてしまったのではないかと舞台を観ていて感じていました。
芥川は若くして逝ってしまいましたが、生ききった末の死だったかもしれないとも感じました。

【いもたつLife】

日時: 2018年12月17日 12:42