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【spac演劇】ペール・ギュント 宮城聰 演出

10年ぶりの上演ですが、“ペール・ギュント”の一生を明治維新後の日本になぞらえて作り直されての再演です。すごろくをモチーフの舞台は変わりませんが、雰囲気もセリフ回しも衣装も、そしてテーマも違ったものでした。

ペール・ギュントはエネルギッシュでやんちゃでエゴイストで、どちらかと言えば良い人間ではありません。その姿を若かりし頃の日本、そして老いていく日本に重ねます。
でもこの演劇、やはり個人の生き方を示唆しているのは変わらないという感想です。

やりたいことをやってきたペールに、ボタン職人は「自分らしかったか?」と問います。ペールは自分らしく生きたと言い張りますが、ボタン職人はそれを拒否します。
これは痛烈に観る者を皮肉っています。
最期ペールは、棄てたソルヴェイに安らかさを与えられます。ソルヴェイだけがペールの味方でもあるように見えます。これも私たちの人生に重なります。

劇は、ペールの壮大な生き様を活き活きと、また波乱万丈に、巧妙なセットと力強い打楽器、そして次から次に繰り出してくる姿も形も立場も違う演者の中で、あくまでもペールが主役で突き進みます。
ペールは人生の終わりにどう落とし前をつけるかに焦点が絞られます。
徐々に年老いていくペールで、生きていく選択肢が狭まれていくという、これも避けることができない我々の姿です。
死ぬ運命を背負う人間の一生懸命に生きても大したことはない人生を謳っているようです。

でも皆それに抗っている。そしてソルヴェイがいるかもしれない。そんな「ペール・ギュント」でした。
主役の武石さんに拍手です。

【いもたつLife】

日時: 2022年10月24日 16:10