月別記事

ブログ 今日のいもたつ

2009年09月

二十四の瞳 1954日 木下恵介

090910blog.jpg

戦争を背景に、村の家族達の悲哀が描かれた有名なストーリーは、
多くの示唆があり、観るものがそれぞれを感じるでしょう。
感動し涙しました。

時の流れとともに、主演の高峰秀子の雰囲気が少しずつ変わります。
18年ぶりの分校に戻った姿は、
その間に起きたできごとを受け止めた姿になって、みせてくれます。

人を想うことしかできないことが、けっして無力ではないことを、
個人の力では何もできない時代にも(時代だからこそ)
大きな支えになっていたことが解ります。

唱歌を口ずさんでいた子供の頃を思い出しながら、
こっそりと涙してみた映画でした。

【いもたつLife】

日時:2009年09月10日 07:40

わが町 1956日 川島雄三

090909blog.jpg

フィリピンの難道路工事(ベンゲット道路)建設から帰国した、
明治の男が、若くして妻を失い、娘を育て、娘は孫娘を産んで失い、
娘婿をフィリピンで失い、孫娘を育て、そして。

頑固で、荒っぽく、負けん気も強い男の一生は
懸命に駆け抜けた生き方で、家族を不幸にもしましたが、
それを責める気になれない男です。

妻、娘、孫娘は、20代前半が主に描かれているのですが、
明治末期、大正時代、戦後まもなくの
3世代の同じ年頃の女性で、夫・父・祖父を支える女性です。
3人の女性を通して、時代の変化が見事に描かれています。

【いもたつLife】

日時:2009年09月09日 07:42

戦争は終わった 1965仏/瑞典 アラン・レネ

090908blog.jpg

ひとつのシーンを説明することなく、その映像が持っている力で語る。
速いカットをつなぎ、ここも、映像が連続することで意味を増幅させる。
ヌーベルバーグの夜明け前を感じさせる作品です。

ただし、それは、手法に限って。
だけど、とても印象深い映像の見せ方でした。

ストーリーは、第二次大戦の影響と価値観と未来への挑戦に、
人生をかけている、とても純真な心をもった主人公と、
それにまつわる人達の話です。

時代の流れに向かうことへのエネルギーがあったのでしょう。
当時の姿がうかがえます。
歴史なんて、過ぎてしまえばあたりまえです。
しかし、当事者は自分の全精力を尽くして、時には、
時の流れに逆らいます。
それは、今行われているいくつかもそうでしょう。

アクションとしてはほとんど見せ場を作ることなく、
映像を進めてゆきます。
観るものにゆだねるのと、
自己が持つイメージで増幅させて受け取って欲しい、
という造り手の声が聞こえてきそうです。

【いもたつLife】

日時:2009年09月08日 07:36

エスピオナージ 1973仏 アンリ・ヴェルヌイユ

090907blog.jpg

ソ連のスパイが主人公で、米・仏・英・西独と展開が広がる、
東西冷戦を象徴している映画です。

スパイ活動をアクションで披露するのではなく、
その立場で何をしていたかを語ります。
国と冷戦と個人(家族は身内がスパイとは知らない)
そして、使命、忠誠心。
だけど持っている価値観での裏切りが起こります。
(裏切りとは一側面)裏切りかどうかはその人の価値観で、
まっとうしている姿でもあります。

当時の世情がわかります。欧米が描かれているので、
日本のことが気になります。
安保闘争の時代でもありますから。

この頃を遠くで察するか察しないかの年齢で、私は育ちました。
冷戦のひとつの結果がこの映画です。
これを観ると第二次大戦では解決しなかった続きが感じられます。
そして、冷戦後は地域紛争へと流れます。

平和な日本では感じえないことを感じさせてくれる映画は貴重で、
こういうものから少しでも、教育では封印されきたことに
接していたいと思いました。

【いもたつLife】

日時:2009年09月07日 07:24

百姓の力 渡辺尚志

090906blog.jpg

江戸時代を知る時、そのほとんどを「江戸の町」から追ってしまいがちです。
また、徳川家を頂点とした上から目線で追います。
政治面からも経済面からもその目線です。

この本は、村と百姓目線から江戸を語ってくれています。
江戸好きな私にとって、わかっているようでおぼろげだったことが、
頷きとともに明るくなります。
そこには日本の隅々まで、人々の知恵で整備された江戸時代の姿が浮かびます。

小さな単位まで上手く機能されていたからこそ、
評価できる江戸時代だったことがわかります。

自然と調和し、領主とも他の村とも調和し、村内の個々人も活かす、
江戸の村の成熟された匠さを知ることができました。

【いもたつLife】

日時:2009年09月06日 10:55

20世紀少年 最終章

090905blog.jpg

ケンヂを中心とした周りの人たちの心の問題が、
最終章では語られていました。
浦沢さんはそれを狙ったのかはわかりませんが、
タイムリーな話だし、
人の心の扱いが今までとは違う問われ方をして
世紀末を迎えたのが20世紀。
として未来からみられるかもしれません。

だから、ともだちこそが「20世紀少年」なのかもしれません。

ともだちとカンナは対照的に育ちました。
周囲がつらかった ともだち、
周囲に恵まれた カンナ、
だけど心の深いところでは同じように傷ついていました。

この二人を主に据えながら、
各登場人物の、生い立ちと子供の頃の心が、
大人になってどう表出するかが随所に描かれています。

最初は興味津々のお気楽で、ミステリアスで、
私の世代には懐かしいSF=表の20世紀でした。
そこから、精神的なSF=裏の20世紀になりました。

どっちが面白かったのか?
二面性も今の世相かもしれません。

【いもたつLife】

日時:2009年09月05日 07:53

20世紀少年 第2章

090904blog.jpg

一作目と代わりシリアスな展開です。
隋所に懐かしさと、役のそっくりが潤いを与えていますが。

この物語は、どこにでもいるただのガキが大人になって、
でも、どえらい事をしでかす奴がいて、
それを止める奴、こっちこそ正義感なんてなく、
自分がもしかしたら原因じゃないかって、
それに引き込まれた結果です。

だからケンジはかっこよくないのですが、
だから共感できます。
そこから物語を続けるには、普通を超える必要があって・・・。

でも(原)作者は読者(鑑賞者)の期待に応えるのは真摯な行動です。

こんなこと考えながらみるのは邪道と、家族にまた言われそうです。

でも次がすぐにみたくなりました。
劇場公開直前にみて、よかったと思っています。

【いもたつLife】

日時:2009年09月04日 07:42

州崎パラダイス赤信号 1956日 川島雄三

090903blog.jpg
くされ縁のカップルは、自分たちのことだけで必死です。
二人を愛したり、親身になってくれる人の気持ちは解らないのでしょう。
結局経済的に破綻するのですが、実はとても幸せにみえてしまいます。

川島監督は、軽快なタッチで結構深刻な話を進めてゆきます。
二人の主人公とそれにまつわる、エピソードが入り、
(おかみさんの旦那が帰ってきてすぐに悲劇になること)
(田舎での清楚な娘の悲劇)
周りの方が深刻そのままに進みます。

当の本人たちは、すれ違いながら元のさやに納まるのですが。
当人たちが一番変わらなければならないのに変わりません。
ここが監督の意図だと私は感じました。

二人は、流した汗からみれば少し不幸な路線を走っているように
思えてなりません。が、
人生の中で、深く掘りさげる必要があるときから逃げているようです。
その時の嫌な感覚は、嫌なだけにそこに行く勇気が必要です。
だけど逃げるから嫌な感覚が増幅してゆきます。

子供の時に、先生のいいなりになっていたこと、闇雲に順序を経てゆくこと、
がありました。
すべてではありませんが、あれも教育として意味があることと今気づきます。

【いもたつLife】

日時:2009年09月03日 07:43

夜の女たち 1948日 溝口健二

090902blog.jpg

戦後間もない時代が作った女たちを、
娼婦としてしか生きてゆけない女たちを、
ほこりまみれで見せてくれます。

自分が望んだ娼婦でもあるのですが、
男と社会の犠牲者です。
救いがあるのかが、ずっと焦点として作品に入り込みました。

自分から抜け出すしか救いはないのですが、
抜け出せる境遇ならそもそもこの世界には入らないし、
長く居ることで、抜けられなくなるのは、いつも同じ、他のことでも同じです。

主演の田中絹代は、娼婦になる前と後ではまさしく別人でした。
ただ、娼婦の中に自分だけが犠牲になればよいというメッセージを匂わせていて、
それは、夫、子供、嫁ぎ先、勤め先で尽くしていた姿と重なります。

どこまで行っても救われないから、どうなっても良い身だけれど、
変われないものがある女の根本を感じました。

【いもたつLife】

日時:2009年09月02日 07:46

アントキノイノチ さだまさし

090901blog.jpg

心が壊れても外傷はないから、他人にはわかりません。
ひどくなるまで、自覚症状もない場合が多いかも。
自分がわからないのだから、他の人にはもっとわかりません。

人の心を蝕む狩人にターゲットにされた主人公二人と他のメンバー
(SFになっても良い位、この狩人はエイリアンと同じです)

主人公二人は、
人が死ぬ生々しい場面を日常とします。
それを通して人の心の繊細さや強さや
生きるための本能とは何かが描かれます。

心が壊れた人達が加速しながらふえている社会です。
その原因のひとつは、ささいなことを喜ぶことができない感覚が
ついてしまったことなのではないか?

二人は心が壊れるという自分で治すしかないけど、
できるかどうかわからない。その苦しみから這い上がりました。
小さな喜びを喜ぶことができる人になって。

そういう心を育ててゆきたいですね。

【いもたつLife】

日時:2009年09月01日 07:36