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ブログ 今日のいもたつ

【2025年11月 グランシップ文楽】

昼の部、夜の部共に、今までにない盛況ぶりでした。

【昼の部】「義経千本桜」~道行初音旅
歌舞伎の舞踊もよいですが、文楽の舞踊も艶やかです。そして人物の心情がこうも伝わつものかという動きです。
コミカルな狐がアクセントになっているのも歌舞伎と通じます。

【昼の部】「新版歌祭文」~野崎村の段
文楽での世話物を鑑賞すると、喜怒哀楽が表現できることがよく解ります。
どうしてもダメ男の題材が多くなるのですが、この劇の久松もです。でも男が弱いというよりも人が堕ちていくのは、ほんの少しの考えの甘さというのはいつの世もです。
それを憐れと、救いの手を伸ばすことが仇になることも常で、ここも人の弱さからです。わが子を谷底に落とす覚悟はできないものです。
それは置いておいて、この劇も一人一人の心情表現に見入ります。
立場立場で変わる人の態度も含めてです。
最終版はかなりユーモアが含まれますが、解説本のその後をみると虚しさを覚えます。

【夕の部】近松門左衛門没後三百年「曾根崎心中」~生玉社前の段~天満屋の段~天神森の段
九平次の罠に掛かり、理不尽にも破滅する徳兵衛に追い打ちをかける九平次の悪口雑言から、お初と徳兵衛が心中を決めていく、成してしまう、見所の多い文楽で、天満屋での縁側にお初、その下に徳兵衛という有名なシーン、天満屋を出ていくときの火打石というシーンももちろんですが、今回は最終の天神森の演出に唸りました。

静寂な闇の中で二人は天神森に向かいます。そして心中は決めているけれど徳兵衛はお初を刺すことに逡巡します。けれど二人はあの世にいくことこそが、添い遂げることが、清く、そして救いになり、そして何よりも二人の愛が成就することを信じ願っていて、これしかないのです。
この重厚な段を、人形の表現はもちろん見事ですが、それに合わせるのが、三人の太夫と、三棹の三味線です。
静かに語る声も音も三つになることで、様々になります。静寂とお初と徳兵衛の心を、たくさんの音色や強弱で仕草に合わせてそれを観るものに目だけでなく耳に心に訴えかけていきます。
見事でした。

【いもたつLife】

日時: 2025年11月19日 18:38