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ブログ 今日のいもたつ

東京暮色 1957日 小津安二郎

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悲しい悲しい物語ですが、
明るい小津映画と同じ位、私達の日常を感じます。

傷ついた家族の物語です。
妻に逃げられた夫、
夫と子供を捨てた妻、
長女は結婚して一児を設けますが、夫婦関係は上手くいっていません、
男に弄ばれて堕胎しなければならない次女。

父は娘を想いますが、母親になれるはずはありません。
突然現れた母(妻)を娘は許せません。
母も許されるとは思っていませんでしたが、
淡い期待がありました。
娘も母を許すきっかけが欲しかったのかもしれません。
しかし、望む路線とは逆になってしまいます。

次女に不幸が訪れて、母は長女から引導を渡されます。
父は何もできません。怒りすら封印していたいようです。

4人の登場人物は、皆受身です。
流されているように見えます。
小津映画特有の変わらない風景で、
いつのまにか変わっている、
時は流れていて無常であることを訴えます。

翻弄されているのは4人だけではありません。
次女を弄んだ男も、その仲間も、
妻の今の夫も、そして父も、次女も長女も、その夫も。

唯一父の妹だけが、流されていません。
だからこの物語は真実に迫ります。
流されていない人間なんて、ほんの一握りで、
流されている人たちは優しい普通の人たちです。
ラスト、長女は自分から選択をします。
後ろ向きっぽい選択ですが、選択した自覚がある選択です。
妻も後ろ向きの選択をします。
ここは切ない希望です。
それと相対するのは父の姿でした。

非情に真実を映す良い映画でした。

最後に、シーンに反する音楽が多用されています。
これもこの映画を深く深くする演出でした。

【銀幕倶楽部の落ちこぼれ】

日時: 2013年01月03日 09:55