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マルタ 1973西独 ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー

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ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー監督の映画にはしばしば最低の人間が登場します。
けれどその人物と自分自身を一緒ではないと切り離してしまうことを決して許しません。

この映画の主人公マルタの夫ヘムルートは、マルタを支配しなければいられない人物で、
しかもドメスティックバイオレンスをもってマルタが恐怖に慄く様に快感を覚える男で、この男の興奮を求める姿は、悪魔の心の起点は理性が封じ込めているけれど自分の中にもあることを示す姿です。この映画はそれを省みさせられます。

またサイコパスを生む社会への問題提起もあります。映画の上でのドイツでは、まだ女性の社会的地位が低い男尊女卑を感じさせますから、当時の社会が生み出していた風潮へ言及していますし、もっと言えば、この問題は現代の方が根が深いと言わざるを得ません。

ヘムルートの巧妙なマルタへの虐待、マルタはそれに耐えることが妻らしいという認識があり、虐待はヘルムートの愛の裏返しだと受け取ろうとする姿(認知的不協和)は、単に夫婦の個々の性格でこの悲劇が起こったとは片付けられない社会が産んだ問題です。
けれども、やはりヘルムートは異常ですし、でも私の中にもあるデビルな人格だと言わしめる力が映画にあります。

強烈な映画でした。

【銀幕倶楽部の落ちこぼれ】

日時: 2014年10月31日 07:18