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【spac演劇】王女メディア 宮城聰 演出

【spac演劇】王女メデイア 宮城聰 演出
観劇したことがなかった「王女メデイア」は「マハーバーラダ」「アンティゴネ」等とは違うギラギラした野心が詰まっています。その宮城さんの若い頃の演出は、今よりストレートに世情への警鐘を感じました。
舞台は日露戦争に勝った頃でしょう。いつの世も同じでしょうけれど、男どもの勘違いを痛烈に描いています。また、弱い立場の女性が虐げられる歴史と、それに抗ってきたたことも歴史で、だから普遍性も謳っています。
劇は浮かれた男たちが女性を相手に好き放題楽しんでいます。そこで行われる劇中劇が「王女メデイア」浮かれて楽しむ演目ではありません。だからラストで女性たちからしっぺ返しを受けます。これは当時の日本や、または調子の乗った他の国に罹る重力です。
翻って、たまたま上手くいっている個人でもあります。それを重ねています。
強権を振る国にしろ、図に乗った個人にしろ、何がその状況がもたらしてくれているのか、人はすぐに調子に乗ります。挙句の果てがあの姿です。
しかし殺された男たちは胎内でもう一度自己肯定を行い、力を蓄えて、まっさらになり、リバースすることがほのめかされます。この演劇の唯一の希望も折りこめられていました。
(日露戦争後1945年まで突っ走った日本が生まれ変わりました。それが成功だったのですが、また危ういです)

他にも素晴らしい点がたくさんあります。その一つが主演のムーバーの実加里さんの動きです。能のようでもあり文楽の人形のようにも見えました。所作の美しさはもちろん、内に秘めた強い力が伝わってきます。
同じく主演スピーカーの阿部さん」も衰え知らずの凄味がありました。声の強さだけでなく、抑揚も含めて魂が揺さぶられます。また、スピーカーの皆さんで重ねる台詞も圧倒的です。観ていて巻き込まれていく感覚になります。

そんな感想とは別に、とても気になったことがあります。それは、たきいさんの立ち位置です。当初私は乞食役とみていました。また、浮かれた男たちを見て興ざめする傍観者でもあると解釈していました。kれど、劇中劇で一度だけ乳母になります。しかしラストは火事場泥棒になり高価な服を自分のものにします。そしてカーテンコール中もずっと抱きしめたままです。幾重もの象徴としての役どころでした。
乞食や傍観者は庶民であり私たちの代表です。乳母はそんな私たちは大きな力で歴史や社会に巻き込まれ傍観してはいられないことを示し、でも強かに生きる糧を手に入れます。しかしカーテンコールにも参加しないでそれを抱きしめ続ける姿は、七人の侍でラスト「勝ったのは農民だ」に重なります。
どんな状況になっても自分を信じ貫くのが大事です。でもそのためには自分を鍛えていなければなりません。
国や社会に全く頼らずに生きてはいけませんが、その気概は棄ててはいけません。

非情な演劇でしたが、素晴らしい演劇で心が揺さぶられました。

【いもたつLife】

日時: 2026年05月15日 15:35