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ブログ 今日のいもたつ

早春

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笠智衆が東京に出張に出てきて、部下の主人公の夫婦宅に泊まります。
ホテルをとりません。

小学校の頃、夏休みや冬休み春休みになると
母親の実家に遊びに行ったものです。
時々そこに大阪から東京に出張する叔父と会うことがありました。
東京でホテルをとらず、静岡の実家に泊まり、翌朝出張先に向かうのです。

これは個人的体験ですが、総じてこの映画全体と重なりました。
懐かしく(鑑賞する方の年齢にもよりますが)
ひとことひとことが優しい雰囲気です。
当時の慣習や仕草が新鮮にも感じます。

いつもながら小津作品は完璧を思わせます。
毎日でも小津映画をみたくなる麻薬性もあるようです。

そして、この早春は先見性がある作品です。
「今の世の中そんなに良いところはない」
「間に合うってことはつまんないことね」
「もう誰もあたしに文句を言ってくれる人はおりやせん」
「おるべき時に降りないと、とりかえしのつかないことになりますよ」
「いろんなことがあって本当の夫婦になるんだよ」
印象に残る台詞がさらりと言われています。

昭和30年代の上り坂の日本、
その中の歪みが描かれています、どこにでもある出来事の中に、
とても深く。

今日は「パンよ」と妻が言います。
「パンなんだ」夫がつぶやきます。
冒頭のやりとりです。
ここまでのシーンとこの言葉でこの時代を現し、物語を予言します。

ラストは
「あっ、いくわ、汽車」
物語をしめくくる象徴的な言葉でした。

【いもたつLife】

日時: 2009年01月24日 07:33