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ブログ 今日のいもたつ

逢びき 1945英 デヴィッド・リーン

不倫ものですが、主人公二人は極めてプラトニック。恋に落ちてしまった幸せと不幸せとトキメキと後悔が繊細に描かれています。特にローラ(セリア・ジョンソン)がアレック(トレヴァー・ハワード)に合いたいがために嘘を重ねていくことで自分を追い込み、また愛するほどに罪を深めていく苦悩が、様々な映像でその機微が表現されるのですが、とても自然で真実味があります。
映画は回想形式で、最初のシーンが最後に繰り返され、観客はそのシーンの深さの落差に愕然となり、ラストのローラの夫の台詞でダメを押されます。
駅の喫茶店でローラとアレックが話をしていると、いかにもいそうな気が効かないローラの知合いのオバサンが自分の言いたいことを機関銃のようにしゃべりまくります。ほどなくアレックが乗る列車が着いてしまい別れる二人、その後取り残されたローラは、この駅には停車しない急行を見にいっていたというそのシーンが、最後には二人の永久の別れであることと、ローラは死ぬほどにアレックを愛したことが解るのです。
それを納得させるのが本編です。そんな妻の行為に勘付いていても問いただすでもなく、それを含めたローラを愛し「長い旅に出ていたんだね」と赦す夫で、この夫にも感動です。人が生きていく上では、どうしようもなく遭遇してしまう偶然があることをも訴えてきます。
ごくごく普通に暮らす善良な人が出くわしてしまった出来事であり、でもそれはその人達の度量を量ることにもなります。単なる不倫ものとは一線を画する名画です。

【銀幕倶楽部の落ちこぼれ】

日時: 2019年06月04日 09:53