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ブログ 今日のいもたつ

ローラ 1981西独 ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー

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マリア・ブラウンの結婚の後を受け継ぐ、その後の西ドイツの姿の映画でした。

復興が軌道に乗った後に起こる、賄賂、癒着、権力の腐敗、私利私欲化、それらを背景に、
中年男と美しい娼婦の愛の物語ですが、皮肉たっぷりの内容です。

表面的には純愛物語です。
州の役人、建設局長として赴任した堅物男が、街で会ったローラに恋します。
娼婦とは知りません。
どうしてもローラに会いたい局長を見ていた部下は、
局長をローラが要るクラブ(売春バー)に連れて行きます。
唖然とした局長、なにしろまじめ一筋でしたから。
でも局長は気を取り直して、ローラをモノにする、というお話です。

純愛は表面だけ、一皮むけば欲望だらけの物語です。

ローラは、街一番の建設会社の社長の愛人です。
その社長は賄賂で会社を大きくしました。
新しい局長ももちろんもてなします。
局長はローラが娼婦を知るまでは、局長として穏やかでした。
公共事業はこれまで通りで構わないというスタンスです。
それが、ローラが建設会社の社長の愛人と知るや、手のひらを返します。

これまでの不正を暴く、全うな役人に、鬼のようになります。(正義です)
困ったのは社長をはじめ、市長達、みんな恩恵に預かってましたから、
そして局長がやっていることは、グーの音もでない正義です。

そこにローラが一役買って、局長と彼らの橋渡しです。
もちろん、局長はローラに丸めこめられますが、ローラと結婚という、
純情男いとってこれ以上ない果実です。

彼らも安泰、そして一番貰いが大きかったのがローラです。
一介の娼婦が大金持ちの仲間入り、しかも一目置かれる存在に、
しかもかねてから欲していた自分が属するクラブも、愛人だった社長に買ってもらい、
しかも、まだ愛人関係を続けるというしたたかさです。

正義が完全に駆逐されるという、根も葉もない解決です。

でも表面的には純愛です。
ローラは局長に正体が知られた時には、心から嘆いていましたし、
彼と居る時はかれと同じく純情でしたから。
でもそれとこれとは違うのが現実だったということです。

映画中他にも人に嫌な部分を映しています。
金持ちが貧乏を嫌うところ、東から来た(東ドイツ?)からきた女性を馬鹿にするところ、
いかにも役所の人々を映すところ、金持ちの社長を取り締まらない警察官、
街の建設計画が無事に遂行されることになった時のシーンも見たくない映像です。

この映画も監督にとって、自国を憂い愛するものだったことが伝わってきます。

【銀幕倶楽部の落ちこぼれ】

日時: 2013年12月17日 07:24