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忍びの者 1962日 山本薩夫

忍者を格好良い演出ではなく、泥臭い、けれど
これが日常である。という視点でとらえられています。
だから、ひとりひとりが地味です。
でもその方が現実だっただろうし、そう感じます。
人は環境と教育で、人格が形成されます。
忍者として生まれると、日陰に生きるもの、表には決してでない、
普通の幸せとは隔世になります。それが疑問にも思わない。
そんな主人公(市川雷蔵)が人並みに気づく話でもあります。
市川雷蔵は好きな役者ですが、こういう影がある役はぴったりです。
石川五右衛門を忍者として設定したことも面白いですし、
信長支配の戦国を、忍者を含めて敵対する底辺の者たちから描いた
という点でも面白い映画でした。
ザッツ・エンタテインメント 1974米 ジャック・ヘイリー・ジュニア

たかだか100年余りが映画の歴史ですが、
無数の作品がつくられました。
言うまでもないことですが。
多種多様で、
国が違えば違う感覚、同じ国でも全く作風が違うのも当たり前、
でも映画会社のテイストもあったりもします。
また、多くのジャンルも出来上がりました。
時代とともに変遷してきました。
映画を縦横無尽に鑑賞していると、
こういう映画にある時出会うと楽しくなります。
ミュージカルという映画史を語る上でなくてはならないジャンル
それもMGM社にしぼり、その醍醐味を往年のスターが紹介してくれます。
ミュージカルに巨大な力が乗り移っていった時、
その時にしかできない作品ができていったことがわかります。
何故この頃のミュージカルを現代によみがえらせないのか?
そんな疑問を何回か持ったことがあります。
あたりまえに、フレッド・アステアのような役者が現れないことも
一因だと思っていましたが、それだけでは腑に落ちませんでした。
その謎のひとつは、ミュージカルが一時代になってしまったこと。
にあることを実感しました。
しとやかな獣 1962日 川島雄三

コメディですが、コメディとは思えない、人間の悪と
生きるためのしたたかさを描いた映画です。
たしかに面白い映画なのですが。考えてしまいます。
脚本も良いですし、人物描写や、カメラワークなど、
好みの映画で今年のマイベスト10に入るでしょう。
団地一軒の中だけで映画は作られています。
多種類のアングルと、時折外からのカメラや、外へのカメラを使い、
台詞以外でも人物を語ります。
内容は、あばしり一家のような家族と、
ひとくせあるその被害者たち、
そして、あばしり一家も舌を巻くほどの女の軋轢です。
言葉遣いが、まったく本音でない、から、オブラートに包んだ本音、
半分本音、かなり本音などその使い分けが妙です。
これらは、普段誰でも使い分けているのですが、
えげつなく描かれています。
でも100%本音はでないんですよね。この映画でも。
でもそれをお互いが理解しています。
笑うに笑えない映画でした。
眼の壁 1958平 大庭秀雄

東京から田舎へと展開してゆくところ、
登場人物の素性があきらかになってゆくところ、
松本清張らしく面白かったです。
佐田啓二の落ちついた二枚目ぶりは、
当時かなり人気があったことを容易に想像させてくれます。
新幹線がない時代の旅、出張がどういうものなのか、
松本清張とふれると、そこにも思いが馳せます。
同じく通信手段も。
日本はがむしゃらに走ってきて、
今は大不況と言われますが、それでもまだ、
走り続けているような気がします。
直近30年くらいの自分の人生を思い返すと、
その流れに自分の生きてきた時間が重なります。
からっ風野郎 1960日 増村保造

弱いくせに粋がって、社会を斜に見て、
負けるのがわかってリングに上がっているボクサーのように、
生きている主人公=三島由紀夫、
なにか自分と重なります。
サルのおもちゃを主人公に見立てますが、
それも自分と重なります。
弱いけど懸命に生きて、悪だけど根っからではないから、
分不相応な妻に見初められるのも、
自分と重なります。
素直になった直後に死が訪れました。
死に際のことを考えさせられました。
或る殺人 1959米 オットー・プレミンジャー

人が人を裁くことには、矛盾があるのですから、
立場によりその結果は変わります。
今までもこれからも、裁判は人が裁くのですから変わりません。
この映画も、裁くことについて描かれていますが、
ただあまりにも不可解なことが多いストーリー進行でした。
その代わりと言ってはですが、
法廷闘争=検事と弁護人の二人の力が入ったシーンは、
とても良く、これ自体が後半のほとんどですから、
ストーリーは別にしても、引き込まれます。
疑惑を両者の言い分で推測し、有罪か無罪を決めるわけですから、
当事者以外は、(当事者を含む時もある)ことの真意はわからずに、
決めなければなりません。
その点では、不可解なまま裁判が進むのは、
映画的ではなく現実的だったとも言えます。
ただ、そこを狙ったようには思えませんでしたが。
一番美しく 1944日 黒澤明

戦時中の国策映画です。
「女子挺身隊」の工場の様を描いています。
どうしても美化されていると感じますし、
それが故の国策映画でしょう。
今この映画を観て、太平洋戦争のことを、
ああだ、こうだ。言うのは傍観者で、
戦時中のリアルタイムでこの映画がどうとらえられたのか。
きっと人それぞれでしょう。
登場する人たちと同じ気持ちの方も、また、
醒めてみた方もいることでしょう。
当時、映画の与える力は今とは比べ物にはならいことも
わかります。
今は映画ではなく、何で、同じことを、同じ影響を受けているのか?
ちょっと不謹慎にもそんなことも考えながらの鑑賞でした。
ずっとあなたを愛してる 2008仏 フィリップ・クローデル

「最善」という言葉の意味を深く考えてしまいます。
息子の殺害の代償として、
主人公は己の一生に十字架を架しました。
主人公は最善の選択をしたのは間違いがないではないか、
でも何かが違います。
この映画はそれを語ります。
それは人が本能だけで生きていないから、
そして本能も働いているから、
ではないでしょうか。
許されることではないことをしてしまった主人公ですが、
高貴な生き方をしています。
その主人公が服役してもう一度人として生き直す、
それを肉親、新しい家族や新たな友とともに
丁寧に描かれているとても良い作品でした。
信心はないけれど
ここが、どれだけ由緒正しいかを今回知りました。
長野市の善光寺に観光で行ってきました。
欧米の映画を見ると、キリスト教とは切り離せられない、
ストーリーやシーンはよくあります。
日本の信仰心との違いを感じます。
何かに手を合わせるという行為は、尊いこと。
ということをあまりにも考えないで長く生きすぎたかな。
と反省します。
こういう場所に多くの人たちが集うから、
実際に自分も来たからまだ良いのでしょうけれど、
もう一歩踏み込んで、なぜ善光寺に来ているのかを、
もう少し重く感じたいとも思いました。
祇園囃子 1953日 溝口健二

溝口監督の映画には魔力があるかのように、
画面に釘付けになってしまいます。
本作も例外なく。
安定した絵の中に、
演者がまさに役そのものに生きていて、
カメラに余韻が残り、次の展開まで、心が探ります。
その繰り返しです。
この物語では、祇園を舞台に芸者を通して、
人の世の慣わしと、人の本分、
肉親との関係(ここでは一番近い父親との理不尽な関係)
より以上になる他人との関係などが描かれています。
それらのテーマにも引き込まれますが、
テーマが何であれ、釘付けになる魅力を、
今回は鑑賞中感じました。
当時の若尾文子さんの映画は何本か観ていますが、
木暮美千代さんとともに、
この作品の演技がピカイチに感じました。

