銀幕倶楽部の落ちこぼれ
白痴 1951日 黒澤明

ドフトエスキーの原作を知っている方には
怒られるかもしれませんが、
知らない私でも、そのテイストが充分に伝わってきます。
ヨーロッパ的で文学的な映画になっています。
黒澤映画での原節子さんは新鮮で、鮮烈な彼女がいました。
久我美子さんも持ち味が出ていて、ファンでもあるし、
二人の対決は息を呑むばかりでした。
黒澤映画の雰囲気=常連の役者がいるし=らしさもありましたが、
テイストが他の黒澤映画とは違ったのは、
やはり原作に忠実だったからでしょう。
雪の北海道はこの物語にピッタリで、
全体が醸す世界に“人とは”を考えることに没頭しました。
【銀幕倶楽部の落ちこぼれ】
マンハッタン 1980米 ウッディ・アレン

このニューヨークを世界中の人にみせたい。
そんな背景を感じ、それをみせてもらえました。
ストーリーは、
現代と言っても30年前ですが、
エゴを、特に男のエゴを、もう全く自分をみるようで、
嫌になる主人公のウッディ・アレンと恋人たちで、
現代と男を描きます。
細かいことはなしで、
大きく感じたのは、
「余裕」人生に一番必要なものかなと思いました。
でもそれは自分が生きる舞台で必要なものです。
軽快だけど、ひとひねりある台詞の応酬も楽しめました。
ウッディ・アレンは優しいロマンティストですね。
【銀幕倶楽部の落ちこぼれ】
抵抗 1956仏 ロベール・ブレッソン

たんたんと語られた良い映画です。
押し付けがましくない、
ドラマを入れている訳ではないけれど、
眼差しを深くしてしまいます。
それは語られる物語(実話)に生きる哲学を込めて
つくられているからでしょう。
ブレッソン監督の作品は初めて観ましたが、
他の作品も観ないでいられなくなりました。
「大根の葉」
掘りたての大根をもらうと葉っぱがシャリッとしているから、
捨てることができません。
3度の食事で煮て食べました。
戦争映画をみて、食べ物のありがたさを感じているから。
なんてキザなことは言いません。
ただ、こういう所も食べてみようを思うのは、
やっぱり裕福なのだだろうという感覚がありますし、
それは大事だなことです。
【銀幕倶楽部の落ちこぼれ】
ほしのこえ 2002日 新海誠

噂に聞いてはいましたが、見事なものです。
でも身近を遠めでみても同じことはおきています。
年賀状を表裏自分で半自動的に印刷するなんて、
机の上にコピー機(プリンタ等)があって気軽にコピー、
いつでも誰とも話せる携帯電話
等々
20年前には考えもつかないことばかりです。
こうして簡単に自分の話題を世界中に情報提供できることも。
だから一人でアニメ映画も作れてしまう。
相当の頑張りはあったことでしょうけれど。
(また、この作品はとてもセンスが良いです)
でも最終的にはセンス(才能)、
もしくは興味を持ったことを磨く努力ですよね。
【銀幕倶楽部の落ちこぼれ】
四枚の羽 1939英 ゾルダン・コルダ

当時としては大規模なアフリカロケは、
今観ても色あせていません。
勇壮で、イギリスの存在を感じます。
物語は、主人公の汚名返上と
それに絡んだエピソードから成ります。
それは王道で、楽しめる演出です。
印象に残るのは、冒頭に主人公とその婚約者との会話です。
自由は社会の中では、幸せになる妨げになる。
というやりとりです。
自由とは何かということを示しています。
自由は自らの意志で、それを許す・認めることとは
違うことは、歴史が語ります。
不自由にこそ安楽や安泰があることは、
隠れた大きな また複数の意志が働いていることを、
この映画でも感じずにはいられませんした。
ただ、物語はとても楽しめるので、
前述はたわ言と思ってください。
【銀幕倶楽部の落ちこぼれ】
僕の村は戦場だった 1962ソ アンドレイ・タルコフスキー

全編を通して、思考と感覚に訴えかけてきます。
戦争映画ですが、戦闘シーンはほとんどなく、
少年イワンの諜報活動と彼の回想シーンで戦争を語ります。
台詞も少なく、観客のイメージに投げかけます。
母親といる時と戦時のイワンの表情の違いが秀逸で、
戦争でどれだけのものが変わってしまうかを、
頭でなく心で、悲しみとして、観ている者に感じさせます。
自分の価値観が今どこにあるのか?
それを試されているようです。
光と綺麗な絵とかすかな音で、
タルコフスキー監督は、ひとつの高尚な映画にしてしまいます。
【銀幕倶楽部の落ちこぼれ】
雲ながるる果てに 1953日 家城巳代治

特攻隊の気持ちがわかるなんてことは言えません。
せめて汲みとりたい。
という気持ちで鑑賞していました。
同じ隊にいる一人がケガで、仲間と同じ日に出撃ができません。
ケガをしている当人が、仲間と一緒に死にたいのも本心なら、
仲間は生き残って欲しいと本心で止めます。
国のためとどこまでも信じる心は、
それが自分を納得させる手段だったのかもしれません。
以前知覧に行きました。
そこに残されている、10代の若者の残した言葉は、
己のことではなく、家族の幸せばかりでした。
人間の崇高さを感じました。
今回の映画では、それを信じることで、死ねる、
それも真実の姿として描かれていました。
もっともっと多くの想いが、
込められて空に散っていったのでしょう。
近い過去の不幸の原因を広くわかっていなければいけません。
【銀幕倶楽部の落ちこぼれ】
ハッピーフライト 2008日 矢口史靖

時の流れの速さを感じます。
今、例外はありますが、飛行機はその需要は単なる移動手段です。
これは当然の進み方です。
たった2年前の映画では、
憧れの部分、非日常が航空業界に備わっていることが、
プ~ンとして作られています。
ただ、10年前とは趣が違いますが。
だからこそ時を感じる映画でした。
ただし、これだけ表と裏を写しただけで興味がそそられるのも、
航空の世界なのでしょう。
やっぱり空を飛びたいのは、人に永遠と積み重ねられた、
本能にまで影響を及ぼす欲望なのかもしれません。
【銀幕倶楽部の落ちこぼれ】
潜行者 1947米 デルマー・デイヴィス

実際の夫婦だった
ローレン・バコールとハンフリー・ボガートですから、
どうなるかは察しがつくのですが、
一筋縄ではいかない、それどころか救いようがなくなってしまう。
でも・・・。
というところが良かったです。
映画の半分以上をボガート目線にするところも
斬新だったことが伺えるし、
当時の共産主義とのアメリカ(西側)の社会情勢が影響していることを、
踏まえて鑑賞することをおすすめします。
【銀幕倶楽部の落ちこぼれ】
パッション 1982仏/瑞 ジャン・リュック・ゴダール

ひとつの映画でたくさんのことを語っていると思うのは、
ゴダールに対して少し失礼なのかも知れませんが、
それを感じました。
ゴダールは強烈に伝えたいものがあったのかもしれませんが、
この映画は、芸術からと、人の欲望のままからとのいう、
かけ離れた人の性から、人と時代に近づいて
人を語っているのではないでしょうか。
時代を反映させていなければ、もつとストレートな表現になった
けれど、時代を反映させているから重厚になっています。
でも、観客に映画の価値を預けているので、
多種の評価や批判もあるでしょう。
そここそが、ゴダールがつくる映画で、
魅力も感じます。
生きてきた経験値が問われる、これも恐い映画です。
【銀幕倶楽部の落ちこぼれ】